書のチカラ 言霊の力
言葉は、人が人に想いを伝える大切な手段。ひとつの漢字や短い言葉の中にも深い意味があって、それは言霊と呼ばれるように、魂を宿します。自分の想いをより大きく、深く知ってもらうためにわたしたちは言葉を選び、紡ぎ、伝えるということを日々繰り返す…
そんな言霊の数々を、目に見える形にしたものの一つが書というもの。遥か昔から伝えられて来た文字や言葉の力を借りることはもとより、「書」という線の表現によってさらに伝える側の想いを紡いでいく事が出来たら…そんな想いのもと、書作活動を行っています。書の魅力を色々な方と共有出来たら、こんなに幸せなことはありません。
書家として、大切にしているもの
作家としての書
書は古くから伝わっている古典を大事にしてきた文化です。そもそもの役割である「伝達の為の文字」が前提としてあり、どんなに新しい表現を求めても、守らなければならないものがあると考えています。とはいえ、現代、書はさまざまな形へと進化しています。筆、墨、硯、紙の基本的な文房四宝に加えて、色を使ったり、様々な道具を使ってみたり、抽象的なものもあります。どこまでが「書の表現」として許されるものなのか。そんなことを常に考えながら書作をしています。
私が大切にしているもの、それは古典からの「風」を受継ぎ、品性が保たれるような作品を作ること、そしてそこから進化する事への挑戦。一見成立しないようなこの二つの両立を求めて、今も、そしてこれからも、暗中模索の日々が続きます。
仕事としての書
ご依頼を頂いた際に大切にしていることは、ご依頼主さまの背景を知ること、です。今の時代、メール一本で、顔を合わさずとも仕事が成立する時代ですが、それでは要望されているご依頼主さまの想いがなかなか伝わってきません。そこで、出来る限りその背景や想いを知るためのお打合せをさせて頂きたいと考えています。お互いに話をすること、それはとても大切な事と考えます。想いが伝わらなければ良い仕事は出来ません。色々お聞きすることもあるかもしれませんが、より良いものを作る為のプロセスとしてご理解頂ければ幸いです。
講師として 〜心の支えとなりますように〜
書がもたらすチカラ
作品作りの一方で、外の世界へ書の楽しさをお伝えする、という大きな役割を担っている自覚を持って、講師活動を行なっています。その教室教室で色々なカラーがあるかと思いますが、私が何より大切にしたいのは、書道がその方の心の支えとなる存在になって貰えるようなサポート、です。私自身、数年前に人生の大きな転機がありました。その時の心の支えとなっていたものは間違いなく書道でした。生きていれば様々な事が起こります。良い事も悪い事も、避けては通れない事もたくさん。そんな時に書道が日々生きていくための支えや力となってくれたらいいな、と思うのです。そしてそうなり得る存在だと私自身の経験から確信しています。そのためのお手伝いが出来ること、を第一の目的として、様々なレッスンを企画しています。
階段をのぼるように
書には色々な形があって、ただ楽しむだけのものから、本格的に掘り下げて学ぶことまで、目的によって様々な方法があります。一般的には経験のない方には敷居の高いものと思われがちのようですが、そんなことはありません。その一つ一つを一段ずつ、階段をのぼるように書と向き合っていただければと思うのです。階段を上がれば上がる程、見える景色が変わります。そうして気がついてみたら、いつの間にか当初の目的とは違った目的の中で書と関わっている自分に気付いて頂くことが出来ると思います。私はその案内人。そんな形で皆さんの書ライフに関わっていけたら幸せです。